駐在員事務所(以下、「代表機構」という)は、中国では「外国企業常駐代表機構」と称され、専用規定があります。
従来、メーカー系の代表機構は、税務機関に申請して認可を得ることで、「営業収入があれば課税する」という認定を受けて実質の非課税扱いが認められていましたが、2010年より関連機関(国務院、国家税務総局、中国工商行政管理総局など)から一連の代表機構に関する新たな法律法規が公布され、非課税の扱いが認められなくなったとともに、既に非課税扱いのを認可した代表機構も順次課税に切り換えられることとなりました。
上記を踏まえて、代表機構として許容される業務内容及びその課税方法などを以下のとおり説明します。
1. 許容される業務内容
国務院が2010年11月19日に公布した『外国企業常駐代表機構登記管理条例』(国務院令第584号)により、「代表機構は営利性活動に従事してはならない」と規定され、従事できる活動として、以下のとおり規定されています。
(1)外国企業の製品あるいはサービスに関連する市場調査、展示、宣伝活動。
(2)外国企業の製品の販売、サービスの提供、中国国内での購買、中国国内での投資に関する連絡活動。
製造業や貿易業等の大部分の代表機構は工商行政管理局にて登記するのみで設立できますが、法律、行政法規あるいは国務院が、代表機構が業務活動に従事する場合に批准を経なければならないと別途規定している業種(例えば、道路輸送、船舶輸送、会計士事務所、銀行、保険、証券等のサービス業13項目)の代表機構設立に当たっては、登記前に先ず中央政府関係部門の批准を得なければなりません。
また、代表機構名義で見積もりを出す、輸出入契約書に代表機構名義で代理署名する、代表機構の口座に営業収入を入金する等の狭義の営利性活動は明らかに不可ですが、良く問題になるのは、顧客を訪問して商談を取りまとめる、本社から輸出した製品に対しての技術サービスを無償で行なう等の広義の営利性活動が代表機構で行なえるのかどうかということです。これについて、広義の営利性活動を行なって来てもこれまで実態として指摘を受けることは全くありませんでしたが、上記『条例』においてこれが明確に許容されている訳ではない点には注意しなければなりません。
2.課税方法
国家税務総局は、2010年2月20日に「『外国企業常駐代表機構税収管理暫定弁法』の発行に関する通知」(国税発〔2010〕18号)を公布し、代表機構に対する課税方法を以下のとおり規定しました。実務上は大部分の代表機構に対して、15%を査定利益率として以下(2)-2)の経費課税方式が適用されています。
(1)代表機構の原則的な申告・納税方法
代表機構は帳簿を設置し、合法的で有効な証憑に基づいて記帳するとともに、実際に履行した機能や負担したリスクに相応することを原則として、課税対象収入や課税対象所得額を正確に計算し、四半期終了後15日以内に申告・納税を行わなければなりません。
(2)税務機関による課税所得の確定
帳簿が整っておらず、収入または原価費用を正確に計算できない及び上述の原則的な申告・納税方法ができない場合は、税務機関は次の方法により課税所得額を確定します。
1)経費支出からの算出方法
経費支出を正確に反映できるが、収入あるいは原価費用を正確に反映できない代表機構に適用。
【計算式】収入額=本期経費支出額/(1—査定利益率—営業税税率)
企業所得税額=収入額×査定利益率×企業所得税税率
なお、代表機構の経費支出額には、中国国内外で職員に支払う給与賃金、賞与、手当、福利費、物品購入費(自動車、事務設備などの固定資産を含む)、通信費、出張旅費、不動産賃貸料、設備リース料、交通費、交際費、その他の費用等が含まれます。
a.固定資産の購入により発生した支出、及び代表機構設立時あるいは移転等の原因で発生した内装費支出は、発生時に一括で経費支出とし、収入に換算して税額計算する。
b.利息収入は経費支出額と相殺してはならない。発生した接待交際費は、実際発生額を経費支出額に計上する。
c.通貨形式にて用いた我国国内への公益、救済性義捐金、滞納金、罰金、及び総機構のために立替払いした自身の業務活動に含まれない費用は、代表機構の経費支出額としない。
d.その他の費用には、本社が中国国内から購入したサンプルのために支払ったサンプル費や輸送費、国外のサンプルを中国に送ってくる際に発生した中国国内での倉庫保管費用、通関費用、本社人員の訪中に際し招聘した通訳の費用、本社が中国に何らかのプロジェクトの入札を行い、代表機構が支払った入札書類の購入費用等が含まれる。
2)収入総額からの算出方法
収入を正確に反映できるが、原価費用を正確に反映できない代表機構に適用。
【計算式】企業所得税額=収入総額×査定利益率×企業所得税税率