マスコミ対策
マスコミ対策も求められるリスクマネジメントの1つである。中国のマスコミにおけるリスクとして、報道されてしまうと他の新聞やネットに転載が広がることが挙げられる。なかでも、特に社名とブランドが一緒になっているような企業は、それが誤報であったとしても製品(ブランド)に何らかの負のイメージがついてしまうことになりかねない。
また、反日感情を背景に、日本企業はマスコミのターゲットになりやすいという側面も意識せねばならない。
さらに、1年のうちに企業が最も警戒を強める日がある。3月15日の「消費者国際消費者権益保護デー」である。もともとは消費者が偽物商品を買わされたりや悪質なサービスを受けたりしないよう啓蒙する日であるが、「实際には『メーカー叩きの日』となっており、特に外資叩きの傾向がある」と指摘する声もある。
1.マスコミとのコミュニケーション強化
こうして、一旦記事が世に出てしまうと企業にとって命取りになりかねない中、いかに誤報や悪質な記事が出ないようにするかが第一段階のメディア対策となる。それには、マスコミとのコミュニケーション、日頃からの消費者へのPRが必要不可欠である。
マスコミとは常日頃からコミュニケーションをとっていくことが重要であり、何もしないことはリスクを増大させかねない。具体的には、イベント開催時に招待するほか、年末や春節などの機会に懇親会を開催するなど日頃からの交流を深める心がけが必要である。
また、地方のマスコミとの関係構築も忘れてはならない。広報資料を定期的に送付したり、地方への出張の際に現地マスコミや地方政府の担当者と交流を持っておくことが望ましい。
また、中国では記者発表会に参加した記者に対して原稿料や車代を渡す商習慣があると指摘する声もあり、慣習上、日本でのマスコミとの付き合い方とは異なる面が存在する点にも留意する必要がある。
マスコミとの関係構築のほか、日頃のPR活動などを通じて、消費者から信頼を得ておくことも重要である。
続いて必要となるのは、記事が出そうな時の対策である。ある企業関係者によると、記事が出る際には何らかの予兆があることが多いという。そしてその予兆があった際には、①事实確認をきちんとする、②記事のマイナスポイントを把握する、③前提としてメディアとのつながりを予め持っておく、④メディアを所管する新聞出版総署など関係先とも連携し、状況を把握した上で対策をとる、といった対応が重要と指摘する。とにかく予兆をいかに察知するかという点と、①~③までの準備がポイントであるという。
さらに、誤報が出てしまった際には、まずはそれが事实誤認によるものなのか、記者の解釈や意見によるものなのかを区別してから対応していくことが求められる。そして事实誤認があれば、きちんと指摘することが肝要である。
また、誤報を指摘する際には、相手の反発を招き、関係をこじらせないように留意する必要がある。抗議の結果、更なる批判的な記事を書かれてしまう事態にもなりかねないからだ。ある企業では、専門のリスクマネジメント会社と契約し、問題が起こった際には対処方法を検討してもらっているほか、中国国内の全てのメディア(テレビ、ラジオ、新聞、インターネットなど)について、自社の記事がないかウォッチしてもらっているという。
中国で誤報が多い一因には、複数のソースを取材して「裏を取る」という習慣が十分定着していないことがあると見る向きもある。ただし、中国人記者にとって、日本企業への取材は、コンタクト先がわかりづらいなど敶居が高く感じられてしまう場合があるという点も着目すべきである。逆に言えば、日頃から関係を構築しておくことで、記者にとっても取材依頼をしやすくなる。きちんと取材をしてもらえることで、結果的に誤報を招くリスクの軽減にもつながるといえる。
2.転載の利用
新聞やネット記事に転載が広がる点はリスクではあるが、逆にこうした特徴を利用して、ポジティブな情報を出していくなどの対策を講じている企業もある。
また、転載先のポータルサイトなどの記事は、中国の为要な通信社、新聞、雑誌などに掲載された記事が使われる場合が多い。そのため、まずはこうした中国の为要な通信社、新聞、雑誌などのメディアに良い記事を掲載してもらうように働きかけていくことも重要である。