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セキュリティリスクへの対応

  

  中国におけるセキュリティリスクとは、(1)対日抗議運動(反日デモ、不買運動など)、(2)新興感染症および災害発生(SARS、鳥インフルエンザ、大地震など)、(3)駐在員の健康状態悪化(脳・心疾患、鬱病など)、(4)情報セキュリティ問題(不正アクセス、情報漏えいなど)、(5)治安悪化(黒社会、誘拐、盗難など)などがあげられる。

 

1.対日抗議運動(反日デモ、不買運動など)

対日抗議運動は、歴史認識問題や領土問題など、政治外交問題によって誘発されやすいため、企業側が発生要因をコントロールすることは難しい。ただし、対日抗議運動発生時の自社への影響を最小限に抑える試みは可能であるとの見方がある。方法としては①内外のリレーション強化、②日頃からの社会貢献活動などを通じた地域住民や地元政府からの信頼醸成である。

 

(1)内外のリレーション強化

対日抗議運動が起こった際に、企業にとって大きな守りとなるのが日頃からの「人」とのリレーションである。まずは社内のリレーション強化である。従業員と日ごろからコミュニケーションを図り、信頼関係を構築しておくことで、対日抗議運動が起こった際に、社内でのストライキ誘発を防ぐことができる。そして、社外とのリレーション強化については、地域社会や地元政府との良好な関係の構築が重要である。

 

(2)社会貢献活動などを通じた地域社会からの信頼醸成

地域社会や地元政府との良好な関係を構築する手段の一つとして社会貢献活動などのPR活動がある。際に、対日抗議運動の影響軽減の対策として、社会貢献活動などの取組みの重要さを認識している日系企業はなくない。社会貢献活動をPR活動としてうまく結び付けている企業の中には、四川大地震の募金活動の施について効果的にPRし、中国メディアに取り上げてもらうなどの例もあった。同社によると、PRの際に大切なのは「中国社会において、中国社会のために、中国社会と共に活動している企業である」ということが伝わるメッセージを作ることであるという。

 

2.新興感染症および災害の発生

(1)安全管理面、事業面の対策が必要

   SARS や新型インフルエンザといった新興感染症の発生もセキュリティリスクの1つである。

こうした感染症が発生した場合、最大のリスクは自社の生産拠点で従業員に感染者が発生し、操業停止に追い込まれることである。これに次ぐのが自社の取引先で感染者が発生し、自社製品の生産に必要な部品・原材料が調達できない、もしくは自社製品が納入できないといった事態が生じるリスクである。前者のリスクに対応するのが安全管理面、後者のリスクに対応するのが事業面での対策である

 

  安全管理面では、従業員の安全確保が事業上の最大リスクである操業停止を回避する対策と言える。対策は以下の6つに集約できる。

①対策本部の設置、マニュアル・対策管理規定の作成、テレビ会議といった通信手段の強化などによる社内体制の整備

②マスク着用、検温、手洗い、うがい励行など従業員の健康管理

③時差出勤、シフト制の導入などの勤務体制管理  

④出張の禁止・制限、従業員の外出禁止・制限といった行動管理

⑤社内・工場の消毒施などの衛生管理

⑥外来者の検温・マスク着用の義務付け、外来者の制限など来訪者管理

 

  事業面での対策としては、自社製品の生産に必要な部品・原材料が調達できないリスクを回避するために、事前に部品・在庫の積み増しをしておくことが有効である。

感染症発生に加え、大地震などの災害発生時の対応策も必要である。感染症発生時の対策として前述した「対策本部の設置、マニュアル・対策管理規定の作成、テレビ会議といった通信手段の強化などによる社内体制の整備」や「事前の部品・在庫の積み増し」に加え、避難経路の周知徹底や従業員の安否確認方法の確立なども必要である。

 

3.駐在員の安全管理

(1)日常の健康管理へのサポートとメンタルケア

  最も身近なリスクであるが、疎かにされがちなのが駐在員の健康管理である。「多くの日本人が中国に行くようになるにつれて、駐在員の生活環境、健康管理を軽く考えて中国に進出する企業が増えている」と指摘する声もある。

  

  中国での日本人の死因で最も多いのは、日本と同じく心疾患と脳血管疾患である。これらは生活習慣病と関わりが深く、日常の健康管理で防ぐことがある程度可能と言われている。新興感染症など発生予測が難しいリスクに備えることも大切だが、こうした身近なリスクから対策をとっていくことも重要である。

 

  また、身体的な健康問題のほか、うつ病など精神疾患も増加している。中国での生活環境やビジネス習慣の違いが駐在員のストレスとなる場合も多い。また、労働争議などのトラブル処理に追われるような場合には精神的に特に大きな負荷がかかっている可能性がある。加えて、最近では沿岸部に比べてさらに精神科医がない内陸部に進出する企業も増えていることもあり、今後は社員のカウンセリング体制の整備が企業の対応として求められる。

  

4.情報セキュリティ問題(不正アクセス、情報漏えいなど)

  インターネットを経由した不正アクセス、顧実・社内情報の漏洩などの情報セキュリティ問題もセキュリティリスクの1つといえる。反日デモが起こった05年には、自社のウェブサイトがハッキングされ数日間閉鎖を余儀なくされた企業もあるなど、日本企業は対日抗議運動の二次的影響としての情報セキュリティリスクも念頭に置かねばならない。

  

  対策としては、セキュリティソフト導入などの一般的なセキュリティ対策のほか、社内のコンプライアンス遵守の徹底など地道な取組みも必要である。しかし、コンプライアンスの管理においては、民族性や商習慣などの違いから適した管理方法は国ごとに異なるため一元管理は難しいとの声がある。各拠点・国ごとに管理方法を策定し事例を情報共有、共有した内容をもとに英語版や中国版のハンドブックを作成している取り組みもみられた。

 

  また、なかには中国の拠点で情報管理に関するISOを取得している企業もある。同社は「中国で情報漏えいは、企業の命取りになりかねない地雷のようなもの。ISO取得はコストが掛かるが、1つのリスクヘッジである」と語る。

 

5.治安悪化

  中国は比較的治安のよい国といわれており、駐在員が誘拐されたり殺害されるといったケースはない。ただし、08年3月にチベット自治区ラサ市で独立を求めるデモをきっかけとして暴動が発生。09年7月には新疆ウイグル自治区ウルムチ市で大規模な暴動が発生するなど、一部の地域で突発的に治安が悪化することがあり、こういったリスクについては十分考慮しておく必要がある