自動化・省力化に向けた動きが加速
中国では近年、賃金上昇が続いており、2010年の法定最低賃金の上昇率は全国平均で23.9%に達した。中国政府は第12次5ヵ年規画(2011~15年)において、「国民生活の全面的な改善」を为要目標の1つとして定め、経済成長と同じペースで国民所得を増加させることや、法定最低賃金を年平均13%増加させることなどを謳っており、日本企業は「今後とも賃金上昇が続くことは不可避」との認識を高めている。
加えて、15年頃からは労働人口が減尐に転じていくことも見込まれており、労働力不足の問題が深刻化していくことも懸念される。低廉な労働力が豊富に調達できるという中国の生産拠点としての優位性は急速に低下しつつある。
こうした賃金上昇や労働力不足への対応策として、進出日本企業が推進しているのが「自動化・省力化」である。これは、日本企業が60~70年代の高度成長期に本格的に取り組んだテーマであるが、こうした動きが今後は中国においても加速していくとみられる。
自動化・省力化に向けて各社が導入を進めているのが産業用ロボットだ。实際、日本ロボット工業会が11年2月に公表した「マニピュレータ、ロボット統計生産・出荷实績10年10~12月期」によると、同期の輸出は、自動車向けが为要用途である「溶接用」では、中国を始めとしたアジア向けが好調だったことから、前年同期比2.1倍の147億円となり、4四半期連続でプラス成長となった。電子・電気機械向けが为要用途である「電子部品实装用」では、为要な需要先である中国向けが大幅増となったことなどから、同75.3%増の419億円となり、5四半期連続で増加となった。
中国での需要増加を踏まえ、産業用ロボット関連企業がビジネスを拡大させる動きが相次いでいる。例えば、セーラー万年筆は11年2月、中国現地法人「写楽精密機械有限公司」(上海市)において、産業用ロボットの生産を新たに開始すると発表。同社は、著しい経済成長に伴い、中国では生産工場の近代化が急速に進展し、産業用ロボット各社も現地生産に動き出していると指摘。こうした状況を踏まえ、中国、東南アジア市場向け取出機を中国で生産・販売することにより、海外市場におけるブランドシェアを高め、高機能、高価格な日本製取出機の拡販につなげることが現地生産開始の目的と説明している。
産業用ロボットは日本企業が高い国際競争力を持つ分野であり、自動化・省力化の動きが加速する中で、ビジネスチャンスの拡大が期待される。