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1、第4次ブームを迎えた対中直接投

 

 日本の対中直接投資の歴史を振り返ると、日本企業が対中直接投資を本格化させる契機となったのは、1985年のプラザ合意後の円高であった。円高の進展に伴い、日本国内の生産拠点の価格競争力が低下したため、日本企業は欧米向け製品の生産拠点を日本から中国も含めたアジア諸国・地域へシフトさせる動きを活発化させた。この傾向は、特に労働集約型産業で顕著であった。

 

 日本企業の対中投資の第1次ブームは、円高が進展した198588年頃である。当時はASEANへの投資が活発化する中、安価な労働力を求めて、繊維、雑貨、食品加工といった軽工業が、日本と歴史的な縁が深く、距離的にも近い遼寧省大連市などを中心に進出した。しかし、89年の天安門事件の発生に伴い、対中投資は冷え込んだ。

 

 第2次ブームは、9195年頃までで、鄧小平氏の南巡講話に代表される外資導入の本格化や市場経済化の加速を受けて、広東省などの華南地域を中心に対中投資ブームが起きた。インフラ開発が進んだこともあり、電気・電子産業や機械産業でも生産拠点を中国にシフトする動きが進んだ。しかし、アジア通貨・経済危機が97年に発生。ASEAN諸国が大きな打撃を受ける中、対中投資も減速した。

 

 第3次ブームは、中国のWTO盟が視野に入ってきた2000年(中国は0112月にWTO加盟)から05年頃までの期間である。第3次対中投資ブームが過去2回のブームと異なる点としては、従来の生産拠点に加えて、中国市場参入のための販売拠点設置などを目的とした投資が増加したこと、進出地域も広東省を中心とした珠江デルタ地域、上海市を中心とした長江デルタ地域に加えて、北京市や天津市を中心とした環渤海地域にも拡大したことが挙げられる。

 

 しかし、日本の対中投資は06年、07年と2年連続で減に転じ、第3次ブームは終焉を迎えた。この背景としては、2001年のWTO加盟を契機として、2000年代前半に製造業による対中直接投資が一極集中的に急増したことに対する反動がある。際、200004年までの対中直接投資の伸びは、日本の対外直接投資の伸びを大きく上回っていた。

 

 その後、08年の対中投資は1.8%増に微増、09年には12.4%増の41497万ドルとなり、国・地域別では香港、英領バージン諸島に次ぎ第3位となった。10年も同様に増加基調で推移、2008年9月のリーマンショック以降、世界経済が急速な減速を余儀なくされる中で、いち早く景気回復を遂げた中国に対する日本企業の関心は従来にも増して高まっており、第4次の新たな投資ブームが到来しつつある。今般のブームの特徴としては、中国をマーケットとして捉え、積極的に市場開拓を図る企業がこれまで以上に増加していることが挙げられる。

 

2、第3国・地域での事業展開を視野に入れた中国進出

 

 最近の日本企業の対中投資の新たな動向として注目されるのが、第3国・地域での事業展開を視野に入れた進出である。198090年代の日本企業の対中投資は、中国において低コストで生産した製品を日本へ持ち帰る、あるいは欧米向けに輸出するための進出だった。それが、2000年代には、中国で生産した製品を中国で売るという市場開拓型の進出が増加した。現在、各社が模索しているのは、中国に進出することで、新興国向けのビジネスモデルを確立し、それを他の新興国に転用・応用する、あるいは、さらに中国で量産した低価格製品を他の新興国に輸出するという戦略である。また、新興国にもパイプを持つ有力な中国企業と戦略的なビジネスアライアンスを締結し、パートナーシップを確立した上で、中東やアフリカなどに連携して進出することを目指す企業もある

 3. 非製造業分野でも新規投資が相次ぐ

 

 製造業向け投資に加えて、最近顕著な増加傾向を示しているのが、卸・小売業、金融業などの非製造業である。

 

 4.環境・省エネビジネスへの参入を模索

 

 急速な経済成長と人口増加等により、中国では環境・エネルギー問題が深刻化している。こうした中で、世界でもトップクラスの環境・省エネ技術を背景に、市場参入を模索する日本企業も増加傾向にある。

 

5.新たなフロンティアとして関心高まる内陸部

 

  地域別にみると、最近急速に関心が高まっているのが内陸部である。世界的な金融危機の中、これまで中国経済の牽引役だった上海市、浙江省、広東省の09年のGRP(域内総生産)成長率が1ケタ台となる中、内陸部は堅調な成長を遂げており、軒並み2ケタ成長を維持した。この背景には、輸出依存度が相対的に低かったことや、4兆元(約50兆円)の大型景気刺激策の一環で施されているインフラ投資が内陸部に重点的に投入されていることがある。加えて「西部大開発計画」「東北振興計画」「中部振興計画」といった中国の地域発展戦略が成果を挙げてきていることも指摘できる。

 

  中国の内陸部は相対的には発展の遅れた地域だったが、中国政府は地域格差の是正を図るべく、インフラ投資を重点的に投入しているほか、外資誘致を推進するなど、同地域への発展に向け積極的な姿勢を示しており、こうした支援も受けて、急速に沿海部にキャッチアップしつつある。中国で広域に販売活動を展開する企業では、内陸部の売り上げの伸びが沿海部を上回っているところも少なくない。物流網が未整備な地域が多いというネックは依然あるものの、内陸部の要都市では購買力が急速に高まっているのもだ。

 

  総体的にみて、日本企業の内陸部への進出は、他の外資系企業に比べて出遅れ感があったが、09年頃から10年にかけて進出が急速に増加している。日本企業としても、人口7億2,000万人と総人口の55%を占め、市場としても大きな潜在力を有する内陸部を中国の「ニューフロンティア」と捉え、ビジネス展開を検討していく意義は高まっているといえよう。